ファンシーという名称ですが、オリジナルのイタリア語には該当する言葉はありませんし、ファンシーという括りもないようです。つまり、トレードビーズが流通する時に、便宜的に付けられた分類のようです。
ファンシー・ビーズが何を指しているか、ですが、主に19世紀に作られた、表面に手作業による装飾が施されたビーズのことを言うようです。これだけだと何のことかわかりにくいですね。他の代表的なビーズ、シェブロン(イタリア語ではロゼッタ)は、層を重ねて最後に削り出すもので、例外はあるものの、表面への装飾は行われません。ミルフィオーリは、あらかじめ準備してあるチップを埋め込むもので、やはりそれ以上の装飾は行われません。これに対してファンシーと呼ばれるカテゴリーのものは、コアとなるガラス玉を準備した上に、表面にいろいろな技法で模様を施すものです。
このファンシー・ビーズ、実はアフリカ向けだけに作られたわけではなく、ヨーロッパ向けの製品もあるのですが、ヨーロッパ向けのものは精巧かつ豪華なものが多いです。ただ今アクセサリーに使おうとすると、ちょっとけばい…という気がしないでもありません。
フローラル・ファンシー
花模様の付いたファンシーのことです。多くの種類があってひとまとめにするのはいささか無理があるような気もしますが。美しいものは非常に美しいです。
アイ・ビーズ
昔からトンボ玉のモチーフにされてきた目玉模様。かつては呪術的な意味合いもあったのでしょうね。ファンシーが作られた頃には単なる伝統的な図案という以上の意味はないと思いますが。
これも目玉模様(あるいは点々)が付いているビーズが一まとめにこう呼ばれているだけで、実際には模様を描くようにしてあるもの、溶けたガラスをくっつけて突起状にしてあるものなど、いろいろなバラエティーがあります。
特に黒字に白い点が付いているものはスカンク、赤字に白のものはレッド・スカンクなどと呼ばれるようです。
点々が一面に施してあるようなタイプのものは、サウザンド・アイと呼ばれています。
フェザー
鳥の羽の模様のビーズ。これは製法的にはバラエティーが少なく、溶けたガラスでつけた縞模様の表面を引っかき、引っ張られてできる模様が羽の形になるものです。
非常に単純なものから、金色が入っていたりしてかなり合成なものまであります。
パイナップル
透明なガラスの表面に斜めの格子模様が入っているもの。言われてみれば確かにパイナップルですね。
フレンチ・アンバッサダー
フランス大使という名前を付けられたこのトンボ玉。調べてみたのですがなぜこう呼ばれるのかわかりません。
ゼン・ビーズ
これは日本の禅から来ているのか…。黒字に「の」の字型に白線をひいただけのシンプルなものです。確かに禅の世界と言われればそのような気もしますね。
ラトルスネーク
ガラガラヘビの意味ですね。これも黒字に白線ですが、波型の線が引いてあります。波型がヘビを想像させるのか、繋いだときにガラガラヘビの尻尾に見えたのか…。
アラベスク
これは薄い楕円の青い玉に白い線で模様をつけたもの。とてもシックなトンボ玉で、他のものとは違った雰囲気を漂わせています。
ブルー・ボウ
「青い弓」と名づけられたビーズです。白地に青い線で弓形が描かれています。多分本当は弓ではないのでしょうけど。
スパイラル
螺旋模様のビーズ。黒字に白のものが多いですが、黄色にピンク、なんていうしゃれたものもありますし、マルチ・カラーのものもあります。
キング・ビーズ
キング・ビーズは独立したカテゴリーとして扱われることも多いビーズです。キングの意味は、どうやらアフリカの王様たちが身につけていたビーズのデザインを真似てベネチアで作ったことに由来するようです。一般的にソロバン玉(バイコーン)型をしていて、色は黒、黄色、緑などがあります。そこに縦線や丸い模様などが付けられています。シンプルですが、大粒の黒の状態の良いキング・ビーズなどは、なかなか貫禄があります。
キングビーズの大きな一連はこちらをご覧ください。
その他
このほかに私が持っていないものとしてゴーストなどがあります。これは多分花か何かが本来のモチーフなのでしょうが、お化けのような模様に見えるのでこの名称があります。大粒な物が多く、珍しいので値段も高く、当地ではまだ見つけていません。
ファンシービーズの参考書としてはまとまったものは少なく、Picards のものがありますが、書店などでは売っていません。私はオークションで入手しましたが、解説書と言うよりは写真を並べたカタログでした。著者のサインが入っていたのは儲け物?!
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